faba99de.JPG8月30日に、フレディー・マーキュリーのソロワークを集めたベストCD、が発売された。(写真上)
フレディ・マーキュリーと言えば、言わずと知れた英国のロックグループ、クイーンのボーカリストであり、メインコンポーザーであった。「キラー・クイーン」も「ボヘミアン・ラプディ」も「伝説のチャンピオン」も「ラブ・オブ・マイ・ライフ」も「愛という名の欲望」もフレディの作だ。
1991年にエイズが原因で死去してから、クイーンは解散。しかしその後、クイーンは英国のみならず、日本でも神格化され、相当のCDセールスを記録しているのは周知の通り。

1970年代前半にデビューしたクイーンの活動キャリアは20年近くに及ぶ。その間、他のロックグループに比べるとメンバーのソロ活動は少なかった。だけど80年代半ばの謂わば「クイーン低迷期」に、各メンバーがソロ活動に走ったことがあった。

その時、フレディは1984年にシングル「ラブ・キルズ」を発表した後、1985年に「Mr.バッド・ガイ(写真左下)」を発売。「ボーン・トゥ・ラブ・ユー」が化粧品のCMソングになったりとヒットを記録した。
どちらかというと、ポップなアルバムに仕上がっているが、自らを「Mr.バッド・ガイ」と歌い、歌詞も今まであまり出なかった内省的な部分が目立った。とにかく「歌いたい」という感情が溢れているアルバムだった。サウンド的には、オーケストラと競演した曲もあるけど、70年代のクイーンのようなドラマチックで重厚な展開は少ない。
だからか「フレディーのソロ=重厚でドラマチックな展開」を期待していた当時のファンには、あまり支持されていなかったような記憶がある。

その後、クイーンとしての活動を再開しながら、著名なオペラ歌手、モンセラート・カバリエと競演した「バルセロナ」をバルセロナ・オリンピックの前に発売する。
1988年には、競演した数曲を集めたアルバム「バルセロナ(写真右下)」も発売された。このアルバムは「Mr.バッド・ガイ」で見られなかった重厚でドラマチックな世界が展開されているが、今度は「やりすぎ」なんて声も聞かれた。難しいものだ。個人的にはこのアルバムは聞き応えがあって完成度も高く大好きだ。日本語を駆使した「ラ・ジャポネーゼ」、日産ブルーバードのCMにも使われた「ガイド・ミー・ホーム」など、良い曲が揃っている。
そして、個人的には2曲目の「フォールン・プリースト」は、クイーン初期を彷彿させる名曲だと思う。

ソロ活動はこのくらいで終焉を迎え、フレディは自らの死を悟り、クイーンの活動を再開。他のメンバー達との結束を強め、「ザ・ミラクル」「イニュエンドウ」という傑作を発表。クイーンの実力(底力)を世に示し、その後1991年11月24日に他界する。

そして、その1年後、1992年に代表的な曲(11曲)をリアレンジ、リミックスした「フレディー・マーキュリー・アルバム(写真中左)」が発売された。
当時、どの曲を聴いても悲壮感が沸いてきたけれど、特にロック的なアレンジを施した「Mr.バッド・ガイ」が心に突き刺さった。オリジナルはオーケストラのアレンジだったけど、ストレートなロック調のアレンジが、フレディーの歌を引き立たせた。
「そうさ、僕はMr.バッド・ガイ、皆を破滅させ、皆が僕を恐れる…」
「こういう生き方しかできない。これが僕の運命…」

アルバム「Mr.バッド・ガイ」発売時の1984年は、まだまだレコード(ビニール)が主体だった。私めも「Mr.バッド・ガイ」はLPレコードを買った。勿論、同時にCDも発売されたが、その後廃盤となり、入手困難となった。私めが持っているCDも、中古ショップをくまなく探して、5年以上掛かってようやく探し当てたものだ。
そんなファンの気持ちを知ってか知らずか、その後、「Mr.バッドガイ」「バルセロナ」とボーナスCDをセットにした「ベスト・オブ・フレディ・マーキュリー(写真中右)」が2000年に発売された。これには、クイーンのデビュー前に「ラリー・ルレックス」という別名で公式発売された曲も収録されるなど、これ1セットで、フレディーのソロワークがほぼ全て堪能できるセットとなった。

その後、クイーンは日本でもリバイバルブームとなり、ドラマの主題歌に使われるなど、予想だにしないヒットを記録する。2005年には「クイーン+ポール・ロジャース」という形態でヨーロッパツアーの後、来日も果たした。

そして、2006年今回の「ヴェリー・ベスト・オブ・フレディ・マーキュリー(写真上)」だ。今回は1枚のものと2枚組と両方発売されている。2枚組についている2枚目はレアアイテムを集めたCDなので、普通のファンは1枚のもので充分と思う。
1枚目も、個人的には、正直この選曲はいただけないと思うし、2枚目も何度も何度も「ラブ・キルズ」のバージョン違いが流れてくる。あまり気持ちの良いものではない。

しかし、今回は、没後15年ということもあるし、細かいことは言わずに、フレディの歌を素直に楽しむのが正解なのだろう。「フレディが一番輝くのはクイーンに居る時」という意見もある。確かにそうかもしれないし、それも正しいと思う。でも、このソロワークでは、クイーンの時には出せなかった「フレディ・ワールド」が展開されているのだ。

そして、没後15年経つ今でも、フレディのような曲を作り、フレディのように歌い、フレディのようなステージアクションが出来るアーチストは出てこない。

時代を超えて、輝きを失わない歌。

フレディに出会えてよかった。