78074cd4.JPG「フリー」と聞いて、大多数の方は何を思い浮かべるだろうか。鉛フリーハンダだろうか。サッカーで相手のマークがついていない状態のことだろうか。(試合中は「どフリー」なんて言い方もするけど「チョー〜」に通じる部分があり、日本語の奥ゆかしさを感じる)
フリー(FREE)は、1968年から活躍した英国のロックバンドだ。オール・ライト・ナウやウイッシング・ウエルは、後世多くのミュージシャンにカバーされた名曲で、多くの人が耳にしたことがあるだろう。基本的にはブルースを基調にしたロックだが、特色は音数が少なく、一音一音が重くドッシリと響くことだ。美しいメロディーがどうというより、その独特の音世界が何ともいえないのだ。
昨年、日本にも来日したQUEEN+ポール・ロジャースの、ポール・ロジャースのキャリアの出発点となったバンドと言えば解りやすいだろう。昨年の11月に発売されたこのCDは、その当時のレアトラックがタップリ収められている。こんなものがメジャー発売されて日本版も出るとなると、QUEEN+ポール・ロジャースのツアーをキッカケに、ポール・ロジャース再評価の動きが出ているのだろうなと嬉しくなる。
昨年の来日公演の様子

1968年といえば、ビートルズがホワイト・アルバムを発表した現役末期の時代だ。レッド・ツェッペリンがデビューした年でもあり、エリック・クラプトンの在籍したクリームが解散した年でもある。しかもQUEENのメンバーはまだ学生だった頃だし、当時、ポール・ロジャースは18歳という若さだし、他のメンバーも同世代だ。
その若さというか、瑞々しい情熱がこのBBCライブからは聞き取ることが出来る。この後、メンバーは不仲&ドラッグに溺れ、フリーは1974年に解散してしまうのだが、そんなことを予期せずに突っ走る音がスゴイ。年明けてこのCDを買ってからというもの、仕事中はずっと聞きっぱなしだ。ズッポリ「フリー・ワールド」に浸っている。
とは言うものの、「フリークラスのバンド」のこの時期の音源というのは、BBCでもしっかりと保存されていないらしく、かなり収集に苦労したようだ。中にはマニアの方がFM放送から録音したものまで含まれている。なので中には音質が悪いものもあるが、私めとすれば充分耳に耐えるものだった。

フリーコレクション家にあるフリー関係のCDを引っ張り出してみた(ポール・ロジャース関係を除く)。
右上はブート(海賊版)だ。これに比べてみたら、今回のBBCライブは、音質も内容も格段にいい。
左上は1991年にリミックスされて発売されたベスト版だ。ビデオも発売されて、そこにはワイト島ライブも収録されていた(オール・ライト・ナウ/Mr.ビッグ/ビー・マイ・フレンド)。
この頃は古くてレアな洋楽アルバムのCD化が相次いでいた頃でもあって、フリーの作品も一気にCD化された。私めも、ファイアー・アンド・ウオーター、ハイウエイ、フリー・ライブ、ハートブレイカー(中央4枚)を買った。この4枚に関しては非常に良く聴いたし、どれも聴き応えのあるものだった。勿論、買っていない他の3枚もレンタルして聴いた。

そして、ギタリスト、ポール・コゾフのアルバム(下2枚)まで発売されたのだ。フリーの演奏で心に残るのは、ポール・ロジャースのソウルフルなボーカルも、サイモン・カーク+アンディー・フレイザーの重いリズムもそうだが、何と言ってもポール・コゾフの泣きのギターだ。影響を受けたと言うエリック・クラプトンなどに比べても、テクニックは全く無いし、キレイなメロディーラインを奏でる訳でもない。とにかくひたすら「一音入魂」なのだ。そういえば以前、この音に入れ込んでソロアルバムも買ってしまったのだった。残念ながらポール・コゾフはドラッグに溺れ、25歳の若さで他界してしまった。もう没後30年以上になる。

以前、ロックは使い捨ての音楽だった。ビートルズ/ストーンズ/フー/キンクスのような大物も、3分間のテレビ・ラジオ出演やドサ周りの営業をやっていたのだ。そのテレビ・ラジオ出演やドサ周りを録音した、約40年前ともなろう音源がこうやって発売されるのだ。それに金を払う。当時のイギリスでもこんな事態は予測できなかっただろう。もしかしたら、J−POPにもこんな時代が来るかもしれない。まあデジタル化の世の中だから、こういった映像や音源の保存は以前よりは簡単だろうけど。

フリーといえば、昨年、DVDも発売している。
これも買って見たくなった。