78fc3766.jpgなんとエイジアだ。発売は2006年の8月。ベスト版とはいえ、初期の頃の耳に覚えがある曲は全て収録されている。
エイジアとは、英国のロックバンドで、デビューは1981年。このデビューアルバムが、英米をはじめ日本でも驚異的な大ヒットとなったことから、「詠時感(エイジア)」というグループ名や、「時へのロマン」「ヒート・オブ・ザ・モーメント」などのタイトルを目にしたことや、それらの曲を耳にした人は多いだろうと思う。
かくいう私めも中学生ながらにLPレコードを擦り切れるほど聴いたクチだ。今まで、ニューミュージックとクイーンとYMOくらいしかロクに聴いていなかった自分にとっては大きなショックだった。
YMOのようなピコピコした音も使われているが、生ドラムやエレキギターの音がダイナミックで、歌を含めた音空間がそれはそれは壮大に聴こえたのを覚えている。とにかくカッコ良かったのだ。
アルバムジャケットやインナーにもメンバーのカラー写真が載ってないのも良かったのかもしれない(笑)。
だいたい、1981年デビューとはいえ、メンバーはみんな60年代末から70年代にかけて、それぞれ別のバンドで活躍してきたメンバーだ。すでにオッサン。カッコイイ筈が無い。でも音は抜群にカッコ良かった。

彼らは「プログレシブ・ロック」と呼ばれるジャンルのグループに属していた。「プログレシブ・ロック」というのは、「ハード・ロック」などどちらかというと破壊力や攻撃性を売り物としていたロックとは違い、クラッシック音楽のような演奏の緻密さや楽曲の複雑さ、あるいは難解な思想などを売り物にしており、たまに1曲が20分以上もあったり(2枚組のLPなのに4曲しか入っていなかったりするのもある)、今考えれば、時代錯誤というかそういう音楽をやってシーンの中にいた人たちなのだ。ピンクフロイドやキング・クリムゾン、イエス、ジェネシスなどが代表格で、70年代には大ヒットを飛ばしている。
しかし、70年代後半になってきて、そういう大仰な音楽は否定されはじめる。

そこで、自分達の「技量」を生かして、ヒットチューンを作ろう・・・と思ったかどうかは定かでないが、今まで20分間掛かっていた曲を4分間に縮めてラジオやテレビ向きに作風を変えたのだ。演奏技術やアンサンブル、作曲能力は確かなものだし、「俺達だって本気出せばこれくらい作れるんだぜ」みたいな感じだったのかもしれない。

かくして、腕利きのベテランによる緻密で精巧でダイナミックなアンサンブルと、壮大な音空間と、キャッチーなメロディーを売り物として発売されたのがエイジアなのだ。決して新人ではない。

さて、この「ASIA GOLD(エイジア・ゴールド)」、この1stアルバムからは全曲収録されている。だから買ったのだけれど。

今改めてシッポリと聴いてみると・・・やはりスゴイ。

カール・パーマーのやたらと手数が多いドラムとスティーブ・ハウのエキセントリックで硬質なギターが、ジェフ・ダウンズの作るキーボードサウンドの空間の中に見事にはまっている。キーボード類も、ピコピコのシンセや単純な白玉だけでは無く、ピアノやハモンドオルガンなどの古典的な音色も実に効果的に使われていて、空間の埋め方というか空間の空け方がスゴイ。このあたりの音の空間の作り方は、後世にも大きな影響を与えていると思う。
そこに、ジョン・ウエットンの歌が乗る。平凡な技量の歌声が、エフェクターにより「スペイシーな低音の魅力」のボーカルに見事に変身しているし、ヘタクソなスティーブ・ハウのコーラスも見事にイコライジングされていて、ジェフ・ダウンズを加えた3声のコーラスも非常にカッコイイ。

曲も、心にしみるメロディーはあるし、変拍子や転調なんかはお家芸だ。しかも、どの曲も時間的にはコンパクトに纏まっているし、その中で色々と仕掛けもあって楽しめるといった具合。見事だ。

但し、これも、1stアルバムだけだ。

それ以降は、「あの成功を再び・・・」とばかりに、試行錯誤の後が見えてしまう。
難解な仕掛けよりも解りやすい曲調に走り、どうも面白くない。

そして、例にもれず、確執やメンバーチェンジを繰り返しながら、現在、このオリジナルメンバー4人で来日中だ。

3月4日(日)愛知県勤労会館
3月5日(月)大阪厚生年金会館大ホール
3月7日(水)・8日(木)東京厚生年金会館
3月10日(土)・11日(日)渋谷公会堂(渋谷C.C.Lemonホール)

なんだ、広島には来ないじゃん。

かと言って、東京まで追いかけていくほどのファンではないしなあ。