d998c684.jpgスティーヴ・ウインウッドだ。
このベストアルバムは、彼がグループに属していた時のコレクション。すなわち、スペンサー・デイヴィス・グループ〜トラフィック〜ブラインド・フェイス〜トラフィックと、天才少年で出て来てから、「天才少年も歳とりゃ凡才」と言われた時代の代表曲が収められている。

スティーヴ・ウインウッドは英国のミュージシャンだ。1960年代、14歳の若さでデビューし、作曲からピアノやオルガンやギターをこなし、「黒人のように歌う天才少年として注目された」と以前の日本の雑誌には書いてあった記憶がある。
その時は、随分差別的な表現があったのだなと思ったりしたけど、実際は白人がソウルフルに歌うことが出来なかった時代なのだろう。確かにスティーヴの歌は非常にソウルフルだ。

スティーヴはその後、16歳の時、ビートルズなどと同じ時期に、スペンサー・デイヴィス・グループの一員として、兄のマフ・ウインウッドと一緒に参加した。
「ギム・サム・ラビン」などの大ヒットを飛ばすが、あまりにもスティーブが突出しすぎていたこともあり、間もなくグループから脱退。
その後は、年上のメンバーとトラフィックを結成。が、やはりギタリストのデイブ・メンスンと上手くは行かず、クリームを脱退したスーパー・ギタリスト、エリック・クラプトンとブライド・フェイスを結成。
スーパー・グループともてはやされ、アルバムは大ヒットするが、やはり上手くいかず、トラフィックをやり直し・・・。

その後、本当の成功を手にするのは、ソロになってからの話。ソロになってからは全米1位を連発して、1980年代にはシーンの中心にいたこともあった。
こんな経緯から、やはり人間には「バンドに向く人間(組織に向く人間)」と「ソロに向く人間(個人事業に向く人間)」がいるのだなと妙に納得した覚えがある(笑)。

多分、推測するに、トラフィックのデイブ・メンスンにせよ、エリック・クラプトンにせよ、スティーヴの才能に押されてしまったのでないか。
60年代〜70年代で上手いロック・ボーカリストと言えば、ポール・ロジャースとこのスティーヴ・ウインウッドが挙げられることが多かったように思う。音程の正確さや声のコントロールの上手さ、情感のこめ方など、力任せで高音張り上げのロック・ボーカリスとの中では能力が際立っていたのだろう。
なので、歌が上手いのは当たり前だが、作曲や鍵盤楽器はともかく、デイブやエリックにしてみたら、スティーブにとって「専門外」の筈のギターもやたらと上手いのだ。
要は、例えば、ある会社の社長が、経理として優秀だと思って雇ったはずの人間が、実は、営業も技術も購買も経営も全てにおいて一流で、社長の座も脅かそうとしているのだ。

これは困っただろう。

でも、その才能が優れた作品を生み出すとは限らないのが面白いところだ。
現に、トラフィックはあまり面白い作品を出していないと思う。(スティーヴ本人は誇りに思っているらしいが)

スペンサー・デイヴィス・グループ時代の歌唱は本当に素晴らしい。惚れ惚れするような歌を聞かせてくれる。
私めは、スペンサー・デイヴィス・グループのベスト版も持っているのだけれど、これが情感のこもったいい歌ばかりなのだ。
今回紹介しているCDには代表的な3曲が収められている。有名なギム・サム・ラビンもいいが、キープ・オン・ランニングの歌が凄くいいのだ。

対して、トラフィックやブラインド・フェイス時代の歌は今ひとつだ。自らの声域に(高音に)自信がありすぎるのか、どうもそれを過信しすぎて曲を作ったようなキライが見える。

私めも、かつて、自分が歌うことを前提に何曲か曲を作ったこともあったし、他の簿カーリストが歌うことを前提に曲を作ったこともあった。ここで、歌い手が高音が出ると過信しすぎてしまうと・・・大変なことになる。
あるいは歌えないなんてこともあるのだ。

そんなことと、発展してきた「不要な」スタジオ技術がスティーブの声をスポイルしてしまい、トラフィックやブラインド・フェイス時代の歌はあまりいいものではないと思う。演奏も見せ所はあまり無いと思う。

ちなみに、その後、ソロになってからのスティーヴ・ウインウッドの歌やサウンドは素晴らしいと思う。大好きだ。これはまた別の機会に書こうと思うのだけれど。
来日公演も2回行った。代々木と横浜アリーナだったか。ハモンド・オルガン、シンセ、ギターを曲毎に持ち替えながら気持ち良さそうに歌う姿は、凄く印象に残っている。

とにかく、安価なCDで、スペンサー・デイヴィス・グループ時代のスティーヴ・ウインウッドの歌を久しぶりに聴けて良かったことは確かだ。

「ロックのクラッシク化」
私めにとっては嬉しいことなのだ。