ラビン+ケイ英国のロックバンド、イエスは、1980年に発表された「ドラマ」の失敗の後、活動は座礁に乗り上げてしまう。スティーブ・ハウとジェフ・ダウンズは「エイジア」に参加し、大成功を収めるが、残りの3人(クリス・スクワイア、アラン・ホワイト、トレバー・ホーン/プロデューサーとして)は南アメリカ出身の天才ミュージシャン、トレバー・ラビン(写真)と共に「シネマ」としてニューアルバムの作成に勤しむ。
トレバー・ラビンは、素晴らしいギタリストであるのだけれど、単なるギタリストの枠を超え、作曲能力もあり、キーボード奏者としても、そしてボーカリストとしても素晴らしい資質を持っていた。当初は「シネマ」もトレバー・ラビンをリード・ボーカルとして製作を進めていた。

が、やはり、バンドにはリード・ボーカルが必要と踏んだのだろう。結局、人事部長クリス・スクワイアから脱退したジョン・アンダーソンに声を掛けることになった。
「どんなサウンドでもジョン・アンダーソンが歌えばそれがイエスになる」と誰が言ったか、「シネマ」の作品は「再結成イエス」として発売されることになったのだ。

これが大ヒットする。

90125タイトルは90125。ジャケットデザインも素っ気無いものだ。今までの「イエス」の既成概念を否定したかったというトレバー・ラビンの気持ちも解らないでもないし、イエスに新しく入った奴と思われたくなかったのも、経緯からしてみたら当然のことだ。
勿論、ジョン・アンダーソンの業績も否定しない。ドライな歌声はロンリー・ハートの曲調にピッタリだった。多分、トレバー・ラビンが歌ったとこで、ここまではヒットしなかっただろう。イエスという名のもとで、ジョン・アンダーソンが歌ったという宣伝性も多分にあったと思う。
「90125」は、トレバー・ラビン+トレバー・ホーン+旧イエスのメンバーが融合していい作品が出来た結果ヒットしたものだと思う。
かくして、アルバム「90125」と、シングル「ロンリーハート」は、英国ビッグネームの一つイエスにしても過去最高のヒットを果たすことになるのだ。


そして、ライブ活動も積極的に行う。

9012live唯一発売されている「9012ライブ」にその片鱗を伺うことができるが、ライブにおいても、トレバー・ラビンの才能は素晴らしく発揮されたと言っていい。
今まで、イエスの特徴の一つだったコーラスは、ジョン・アーンダーソン+クリス・スクワイア+スティーブ・ハウの3声のコーラスだった。これが下手くそのスティーブから上手いトレバー・ラビンに代わったのだ。要は、声域が同じような、ちゃんと歌える人間の3声のコーラスになったのだ。これは強力だ。
そして、ギタープレーの柔軟さ。「90125」や「ビッグ・ジェネレーター」に収録されている曲は当たり前にしても、過去のイエスの楽曲、すなわちスティーブ・ハウのプレイによる曲も、全て自らの解釈でプレイしてみせた。更に、キーボードのリック・ウエイクマンが弾いたフレーズで、トニー・ケイが弾けないであろう速弾きも、トレバーはギターで簡単に弾きこなしたのだ。「燃える朝焼け/Hearts of the sunrise」の中間部のソロや「Your is no disgrace」におけるギタープレイは凄まじい。
それが、オリジナルよりもエキサイティングで格好良かったりした。

そういう能力を知っているから、私めは「トレバー・ラビン擁護派」なのだけれど、旧来のイエスの良さを求めるファンからは、ポップになってしまったイエスに風当たりが厳しかったは事実だ。

Big gene次作の「ビッグ・ジェネレーター」では、完全にトレバー・ラビンの配下になってしまったイエスの姿がある。これは仕方ないだろう。本作品ではプロデュースも行っているし。
セールス的には、前作90125には及ばなかったが、この「ビッグ・ジェネレーター」は、トレバー・ラビンの能力があらためて世に知らしめされた作品となった。


ラビン+スクワイアメンバーも皆、トレバー・ラビンの能力に感服し、すっかりトレバー・ラビンがグループの中心人物となっていた。
この時のキーボードは、トニー・ケイ。テクノロジーにも精通していないし、演者としての能力もトレバー・ラビンの方が明らかに上だ。なのでか、あくまで「弾くだけ」に徹することができた。
力強さが身上のドラマー、アラン・ホワイトも、当のクリス・スクワイアも、才能豊かで若いトレバー・ラビンと演るのが楽しくて仕方なかったのだろう。
ライブの時も、メンバー達は明るく笑いながら楽しそうに演奏する姿が目立っていたし、トレバー・ラビンを盛り立てるという形、バンドとしての相性であるとか、バランスやコンビネーションは非常に良かったと思う。

しかし、その事態が面白く無い人間がひとりいた・・・。

旧来からのイエスの顔役、ジョン・アンダーソンだ。そりゃそうだ。とにかく常に自分が中心でありたい人間なのに、新顔の若手が我が物顔して中心に座っているのだ。タマラナイだろう。

ジョン・アンダーソンは「このグループ」脱退し、そして、新たなプロジェクトを考えた。
これは、また別で述べたいと思う。

ジョン・アンダーソンを失ったイエスは、4人でレコーディングを行う。
そして、新ボーカリストとして、スーパー・トランプのロジャー・ホジソンに声を掛けることになる。

そして自らがイエスなのだと疑わないジョン・アンダーソンは、この4人の事を「90125グループ」と呼ぶことになるのだ。

続きはまた後日。