01タイトル夏の長期キャンプの間、ドライブに出かけた。今年の夏は例年より暑く、いつもは涼しい大鬼谷オートキャンプ場も結構暑いのだ。なのでドライブに出かけることにした。向かうは出雲坂根駅。
実は7月23日に島根に行った帰りに出雲坂根駅に寄った。その時にカミさんを連れてくるのも悪くないかなと思ったのだ。
で、その時も写真を撮って記事にしようと思ってそのままになっていた。今回の記事は7月23日に撮った写真も使うことにした。

1.木次線 出雲坂根駅
02時刻表JR木次線は、山陰本線の宍道駅と芸備線の備後落合駅を結ぶ路線だ。芸備線と組み合わせて陰陽連絡線として機能していた時代もあり、広島−松江・米子間に急行/準急が走っていた時代もある。(なんと夜行まで走っていたのだが)
現在直通する列車は定期列車で3往復/1日のみ。なんともさびしい限りだ。

03駅舎の中ここ出雲坂根駅は、3段スイッチバックと延命水で知られている。駅舎の内側にもその標記があるが、列車でこの駅を利用する人は少ないだろう。2004年度の乗車人数は3人だそうだ。(wikipediaより)
ほとんどが自家用車か、トロッコ列車での立ち寄り組だろう。

04周辺図3段スイッチバックの図がある。3段スイッチバックと大きなカーブ/8個のトンネルで三井野原駅までの167mの標高差をクリアしていく。平行する国道314号線はまだ旧道が書いてある。この地区は雪も深く、相当な難所であったと聞く。実は木次線が生き残っている一番の理由が「平行する道路が未整備である」ということなのだが。

鉄道は自動車と違って急勾配を登ることができない。なので標高差が大きい場合は、このようなスイッチバックやループ線などが設けられ、なるべく勾配を緩くする措置がとられる。スイッチバックでの山越えは、占有する鉄道用地の面積が比較的小さく工事費用が安価で済むことが利点だが、列車を停車させて逆方向へ進むことを強いられるので、通過時間が多く掛かるという大きな欠点がある。

05周辺図新ちょっと新しい図も出されていた。ここには「おろちループ」も描かれている。あれ、三井野原駅の標高が低く書いてあるな。こちらが正しいのか?

06構内駅構内。見ての通り有効長はそんなに長くないが、立派な駅舎とホームが残っている。当然上下列車の交換ができるようになっており、今でも奥出雲おろち号が運転されるときは上下列車の交換が見られる。
また雪が多い地方であることもあって、上下線の間に排雪溝が見られる。

07本線方面踏切から本線方向を望む。左下が宍道方面。右方向に伸びている線路は、一度スイッチバックを行ってから三井野原方面(広島方面)へ向かう。

08延命水ホーム脇に延命水と呼ばれる湧き水がある。


08延命水拡大この水を飲んだ狸が100年生きたという伝説があるらしく、狸の置物が置いてあった。少し頂いて飲んだが、軟水でおいしい水だった。
水筒に入っていた水を流し、水筒いっぱいに延命水を汲んだ。

09延命水説明反対側ホームには、延命水の説明を書いた看板があった。

10延命水跡反対側ホームの傍らにも狸の置物が置いてあった。かつてはここにも延命水を引いていたのだろう。今より少しは頻繁に列車が到着した時代、列車が交換やスイッチバックの出入りで忙しい時に踏切を渡らずに延命水が汲めるようなはからいだったのだろうか。

11新延命水今では駅から道路を挟んで反対側に延命水を汲む場所が作られており、多くの人はそっちで延命水を汲んでいるようだ。なので駅舎に立ち入る人は少ない。多くの人がポリタンク持参で階段を降りていく姿を見かけた。

12国道314号線駅前を通る国道314号線。
前述の通り木次線が生き残った最大の理由は「平行する道路が未整備」であるからだが、現在はこの通りの快走路だ。しかも交通量もそんなに多くない。
なので、木次線はいつ廃止になってもおかしくない状況ではある。

13焼き鳥駅舎の横で焼き鳥を売っていたので頂くことにした。炭で焼いていて美味しい焼き鳥だった。そして焼き鳥を肴に延命水を頂くことにした。

PICT0028焼き鳥を食べていたら、周辺が騒がしくなってきた。トロッコ列車(奥出雲おろち号)が到着するらしい。
すると遠くから轟音が聞こえてきて間もなくトロッコ列車が入線してきた。客車が先頭の推進運転だ。
ということで、駅構内へ見に行くことにした。

15トロッコ列車1夏休みということもあって、ナカナカ繁盛しているようだった。
これがSLだったら良かっただろうが、芸備線−木次線にはそのような設備は無いし、半定期的に走らせるのは難しかろう。
カミさんも「やまぐち号とは全然迫力が違う」と漏らしていた。

16トロッコ列車2機関車はDE15。汎用的な機関車DE10に除雪設備が取り付けられるようになっているのがDE15だ。冬の間は除雪用に使うのだろう。
それに12系客車を改造した客車が2両。1両はフルクローズ、1両は窓部と後部がオープンエアーになっている。流石に天井までオープンエアーにする勇気は無かったのだろう。フルクローズとなっている客車がスハフ12で床下にディーゼル発電機を積んでいて、その音が響いていた。オープンエアーの客車はオハフ13ベース。このあたりは良く考えられているなと思った。

17トロッコ列車渡り線トロッコ列車が発車。こんどは機関車を先頭にスイッチバック線に入っていく。ダブルクロッシングの渡り線をクネクネと通過する姿は、短いながら「おろち号」の迫力があるではないか。

18トロッコ列車去るスイッチバック線は出雲坂根駅からは見ることができない。列車が去るとマニアらしき人が自分の車へ急ぐ姿が見られた。
トロッコ列車は木次線存続の鍵となるか。

19a木次線キハ120ちなみに普段の定期列車はキハ120で運行されている。これは7月24日に撮った写真。別に時間を狙ったわけではないのだけれど、なぜか駅に立ち寄ると列車に出会うという幸運に恵まれることが多い。今回もそうだったし。

19遠くに見えるオロチループ我々もそろそろ行くことにした。駅舎の上に見えるのが三井野大橋。ずいぶん高いところにある。


2.おろちループ
24おろちループ前景出雲坂根駅を後にしておろちループへ。「未整備」だった国道314号線は、このおろちループ完成で庄原−仁多−出雲・松江・安来間のメインルートとなった。とはいえそこまで交通量は多くないのだが。
一応、道の駅があったりで観光地としても多少整備はされている。

20三井野大橋そのおろちループの一番上にあるのが三井野大橋だ。

21三井野大橋2この橋を渡ってトンネルをひとつ超えると、陰陽の分水嶺がある。要は一番高いところにあるのだ。

22三井野大橋3ナカナカ立派な橋だ。

23三井野大橋から木次線が、それより何より驚いたのが、三井野大橋から山を見たら、同じ高さに木次線の線路があるではないか。
いやいや実際に車で登ってみると解るけど、これはかなりの標高差だ。これを鉄道がクリアしているのだ。
おろちループには何の感動も無かったが、木次線がそこに見えたことは大きな感動を覚えた。


3.木次線 三井野原駅
25三井野原駅舎7月24日には三井野原駅にも立ち寄った。
ここは世にも珍しい駅前にスキー場がある駅として有名だった。広島に来た10年前、情報誌にも三井野原駅と三井野原スキー場が紹介されていた。

26三井野原駅ホーム駅前にスキー場がある駅としては、ガーラ湯沢駅とか越後中里駅とかを思い出すが、ここは短い単線ホームがある無人駅だ。
それでもかつては広島や福山から直通のスキー列車が運行されていたらしい。今ではこの駅にも定期列車は3往復のみ。スキー場へ訪れる人の殆どがマイカー利用だろう。

27駅前駅の反対側は斜面になっていて、ロープ塔がある。雪が降れば景色は一変するのだろうか。

28スキー場表示駅のホームから見えるようにと、スキー場の案内図がある。
が、殆ど意味をなしていないのか、放置されているようだった。

29最高標高駅にあった横断幕。標高726m・JR西日本で一番高い駅と書いてある。駅長おすすめの旅も、トロッコ列車とサイクリングでスキーのことはひとことも書いていない。

29貸スキーセンター貸スキーセンターの看板もいかにも古い。新台・グラスファイバー・子供用ボート・?と書いてある。グラスファイバーのスキー板が珍しい時だったのだろうか。最後の漢字は何だろう。そりと入れて変換したら「橇」という字が出てきた。これとは一致しそうにないし。

30スキー場リフト駅から少し離れたところに、少し近代的なリフトがあった。夏はまったくもって閑散としていて、民宿も食堂も営業している雰囲気も無いが、冬になると多くの人が訪れて活況となるのだろうか。
ただ昨今の雪不足や若者のスキー/スノボ離れから、中国地方のスキー場はどこも経営が苦しいと聞く。

スキー列車の復活は難しいのだろう。


4.備後落合駅
31備後落合駅おろちループ〜三井野原を後にして備後落合駅へ。芸備線と木次線の分岐駅で、かつては広島方面・岡山方面・島根方面の列車が行き来し、活気があったという。当然私めも駅の名前は広島に来る以前から知っていた。
今では一部のスジでは秘境駅として人気があるらしい・・・。

32備後落合時刻表それが今は発着する列車はこれだけ。全ての列車がこの駅の折り返しとなるので、この駅を通り過ぎる列車は無い。いくつもあるポイントも動かす必要もないほどだ。芸備線の三次方面は7本/日、芸備線の備中神代方面と木次線方面は3本/日しかない。
木次線はまだしも芸備線ですらこのような状況なのか。
広島近郊は20分おきに列車が走り、三次まではまだ本数も多いのだが。

33芸備線ホーム駅舎から芸備線ホームを臨む。かつては交換や分割併合も頻繁に行われていたであろう立派なホームは、現在は1日10本の列車が別方向に発着するだけのホームになってしまった。

34駅舎と木次線ホーム芸備線のホームに渡り木次線ホームと駅舎を臨む。有効長が短いホームに対して大きな駅舎が、かつての栄華を物語っている。

35何かの詰所構内のはずれには、何かの詰所の跡が残っていた。こんな山奥の拠点では、職員も待機する時間も長かっただろうし、分割併合やポイント操作のための要員も多く必要だっただろう。
広い構内はホーム周辺以外は草生していた。

36芸備線来るボケっとしていたら、三次方面から芸備線のキハ120がやってきた。おお、ラッキー。

37芸備線入線もちろん、当駅止まりの列車だ。長いホームに短い列車。良く見られる風景だけれど、何度見ても哀愁を感じる。

38乗換えこの列車は広島方面からの接続も考慮されているせいか、結構乗客も乗っている。先ほど出雲坂根で見たトロッコ列車がそろそろ到着するころだから、トロッコ列車に乗車する乗客が殆どか。
駅前に送迎の車も多いから、ここから車でどこかへ行くひともいるだろうけど。

なので、秘境駅というわりには賑わっていたのだ。

ただ、平日とはいえ、出雲坂根にしろ備後落合にしろ夏休みにこの程度の人出だ。とても単体で採算がとれているとは思えない。
沿線の風景は平凡だがいい風景だ。延命水やおろちループ、そして亀嵩駅の蕎麦もある。けど平凡で特筆するようなものは何もない。それこそ三次あたりからSLでも走らせないと人を集めることは出来ないだろう。そのためにはかなりの設備も必要になるし。

以前も書いたが、芸備線−木次線を使って山陰に旅してみたいな。